世界57ヵ国で大ヒット!
世界はきっと変えられる。
2021年2月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次公開!

INTRODUCTION

世界はきっと変えられる。
3年以上かけてCGなしで撮影された奇跡の友情の物語。ひとつの家族の再生を通して映し出される南アフリカの現実とは―――。
11歳の少女ミアと、クリスマスの日にやってきた小さなホワイトライオン・チャーリーがはぐくむ友情、
そして南アフリカの社会問題が、ミアとその家族の再生を通して描かれる奇跡の物語。
ドイツ、フランス、南アフリカの共同制作で作られた本作は、映画『アラン・デュカス 宮廷のレストラン』(17)など、多くのドキュメンタリー作品を手掛けるジル・ド・メストルが、南アフリカの社会問題である”缶詰狩り”(トロフィー・ハンティングの一部)をテーマにメガホンをとった。少女とライオンの関係性をリアルに描くため、ヨハネスブルグ近郊で野生動物保護区を所有・運営している動物研究家で保護活動家のケビン・リチャードソンが撮影に参加。実際に3年を超える年月をかけて撮影され、少女とライオンの友情はもちろん、南アフリカの大自然が映し出されたCGなしの圧巻の映像が完成した。
主人公・ミアには、300人以上から抜擢されたダニア・デ・ヴィラーズ。11歳だったオーディションの日の出会いから時間をかけて築き上げられた小さなホワイトライオンとの信頼関係を元に表現されるフレッシュかつ体当たりの演技で、多感な時期の少女の成長の機微が説得力を持ってフィルムに収められた。
またミアの母親・アリスには、幅広い役柄をこなし、近年では映画監督としても才能を発揮もしている女優メラニー・ロラン(『イングロリアス・バスターズ』(09)出演、『ガルヴェストン』(18)監督)、父にラングレー・カークウッドなど多彩な俳優陣が顔をそろえる。またミアの相棒となるチャーリーは、ダニアとの相性を見ながら選ばれたホワイトライオンのトール(Thor)が人間さながらの演技を披露している。
九州大学 基幹教育院 准教授
安田 章人氏 コラム
アフリカにおけるトロフィー・ハンティング/缶詰狩り
本作のテーマとなっている「缶詰狩り」。日本ではあまり聞き馴染みのない「トロフィー・ハンティング」と「缶詰狩り」の違いや南アフリカにおける実情について、アフリカなど海外の狩猟現場でフィールドワークをおこない、人と野生動物の共存について研究されている九州大学基幹教育院の安田章人准教授に解説いただきました。
アフリカにおけるトロフィー・ハンティング/缶詰狩り
安田 章人
オリックス(ゲムズボック)のトロフィー
(南アフリカ共和国にて安田氏撮影)
■日本では狩猟が今ブームに
今日、日本で狩猟がブームとなっている。その背景には、近年、ニホンジカやイノシシによる農業被害が深刻化していることや、ジビエ(野生鳥獣の肉)という言葉がマスメディアで大きく取り上げられていることがある。また、昨今のアウトドアブームと関連して、環境省が「狩猟=すごいアウトドア」と銘打って、新規狩猟者を募集していることも関係しているとも思われる。このブームの波を受けて、遅くとも1975年以来続いてきた狩猟者数の減少傾向は、2000年頃から横ばいに転じており、北海道では、2009年以降、漸増している。いま、注目が集まっている狩猟に対して、みなさんがもつイメージとは、どのようなものであろうか。シンプルに、「肉を食べるために、鉄砲や罠で獲物を狩る活動」というものではないだろうか。
■「トロフィー・ハンティング」とは?
しかし、人が狩猟をおこなう目的は、肉を手に入れることだけではない。都会を離れ、自然の中に入る幸福感や、野生動物と対峙するスリル、大量あるいは特大の獲物を仕留めて得られる征服感、仲間と協働する連帯感など、心理的・精神的欲求の充足や娯楽性も、人が狩猟をおこなう目的である。トロフィー・ハンティング(Trophy hunting)は、まさにその心理的・精神的欲求の充足や娯楽性の獲得を主たるものとした狩猟である。トロフィー・ハンティングとは、トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした狩猟である。A. ヘミングウェイの作品に登場するようなトロフィー・ハンティングは、決して過去のものではなく、欧米を中心としたハンターたちによって、現在も活発に世界中でおこなわれている。そのなかでも、特にハンターたちに今も昔も「故郷」あるいは、「メッカ」とされているのが、アフリカ大陸である。なかでも、南アフリカ共和国はアフリカ最大のトロフィーハンティング産業国であり、「ビッグ・ファイブ」と呼ばれるライオンとヒョウ、ゾウ、サイ、バッファローのすべてをハンティングすることができる唯一の国である。
■「トロフィー・ハンティング」と「缶詰狩り」の違い 南アフリカにおける缶詰狩りの実情は?
トロフィー・ハンティングのなかでも、最も特徴的であり、物議を醸しているものが、缶詰狩り(Canned hunting)である。缶詰狩りは、トロフィー・ハンティングと同様に娯楽とトロフィーを目的とした狩猟であるが、人工的に繁殖させた(野生)動物を囲いの中に放ち、なんの苦労もなくハンターはそれを仕留めることができるようにしている。つまり、本来、獲物を得るために必要な追跡をなくし、引き金を引くか、矢を放つかだけでよい。そのため、缶詰狩りには、野生動物がその素晴らしい身体能力で逃げ切るか、あるいはハンターの技量と運が勝るかという駆け引き、いわゆる「フェア・チェイス(Fair chase)」の精神と倫理性が欠けており、動物愛護団体だけではなく、同じハンターからも批判が集中している。
(野生)動物を飼育するGame ranch
(南アフリカ共和国にて安田氏撮影)
では、なぜ、缶詰狩り、あるいはそれを含めたトロフィー・ハンティングは、アフリカから消えないのか?それは、映画のなかで、ミアの父親が語っていたように、それが産業として確立しているためである。南部アフリカでは、1960年~70年代に野生動物の所有権および消費的利用による収入の獲得権が土地所有者に与えられた結果、家畜の牧場から野生動物の繁殖場(game ranch)への転換が進んだ。その結果、南アフリカ共和国には、2004年の時点で、170万頭以上の野生動物が生息する5000の繁殖場と4000の家畜と野生動物が混ざった牧場があり、そこを舞台にしたトロフィー・ハンティングあるいは缶詰狩りによって、年間350億円以上の収益と、1700人以上の雇用機会が生み出されているという。
■なぜ缶詰狩りなのか?

同じ野生動物を使った観光であるならば、殺さずに写真に収めるサファリでよいではないかと思われるかもしれない。しかし、サファリを目的としてアフリカを訪れる観光客は、ハンターに比べて、観光による消費金額が少なく、1人当たりの経済効果が小さいとされる。また、サファリは、リゾートのような宿泊施設や整備された道路が整った場所でしか、多くの観光客を集めることができない。実際に、アフリカでサファリ観光が成功している場所は、東部と南部の一部しかない。そのため、トロフィー・ハンティングは、インフラに問題を抱える地域でも、観光が行うことができ、地域経済の発展に貢献できるとされている。

経済の問題を考えたとしても、人間の欲望のために、動物を生ませ、育て、殺すという缶詰狩りを許すことができないと思われるのはもっともである。私も1人のハンターとして、それは単なる殺戮にしか見えず、看過することはできない。しかし、人間のために生まれ、育てられ、殺されるのは、実は、多くのみなさんが食べている牛や豚、鶏も同じではないだろうか。
この映画は、缶詰狩りに対する問題提起と、深い家族愛が描かれているが、それだけではなく、アフリカにおける野生動物観光の現状、そして、昨今、話題となっている狩猟や野生鳥獣問題、普段の食肉など、我々人間と動物との関係を改めて見つめなおす機会をも与えてくれるだろう。

筆者プロフィール
九州大学 基幹教育院 准教授。 専門は環境社会学、地域研究。国内および、アフリカなど海外の狩猟現場でフィールドワークをおこない、人と野生動物の共存について研究をおこなう。狩猟歴8年。

STORY

ライオンファーム経営のために家族で南アフリカに移った11歳のミアは、
心に病を抱える兄・ミックにかかりきりの母、仕事に追われる父の中で、孤独を感じていた。
南アフリカでの生活に馴染めない日々が続く中、クリスマスの日にファームにホワイトライオンのチャーリーが生まれた。
初めは心を閉ざしていたミアだったが、まとわり付いてくる小さなチャーリーの世話をし、
共に成長していくうちに互いに特別な友情で結ばれていくー。

3年の時が過ぎ、チャーリーの存在はファームにとっても観光客を呼べる重要な存在となっていた。
そんなある日、ミアは父親が隠していた驚きの事実を知る。
父親は囲いの中で野生動物をハンティングする「缶詰狩り」の業者にファームで育てたライオンを売っていたのだ。
チャーリーを救うため、ミアはあらゆる危険に立ち向かいながら、
ティムババティ野生保護区を目指し、南アフリカを横断しようと試みる。

奇跡の1300日ギャラリー

※缶詰狩り(キャンドハンティング)= トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした狩猟形態「トロフィー・ハンティング」の中の一つ。人工的に繁殖させた(野生)動物を囲いの中に放って狩猟するため、「フェア・チェイス(Fair chase)」の精神と倫理性が欠けるといった観点で、動物愛護団体だけではなく、同じハンターからも批判が集中し、南アフリカにおいて社会問題となっている。
ダニア・デ・ヴィラーズ
(ミア・オーウォン役)
2003年生まれ、南アフリカ・ケープタウン出身。10歳より演劇と歌のレッスンを受け始める。2013年、ハリウッドのパフォーミング・アーツ・ワールド・チャンピオンシップに出場し、ジュニア・チャンピオン・グランプリを受賞。2014年には南アフリカや海外のCMでキャリアをスタートし、経験を積む。初映画出演作となった『ミアとホワイトライオン』で主役に抜擢され、2015年から2018年の3年間、ミア役を演じた。
メラニー・ロラン
(アリス・オーウェン役)
1983年パリ出身。1999年、ジェラール・ドパルデュー監督作『Un Pont entre deux Rives(原題)』でスクリーンデビュー。2006年の『マイ・ファミリー 遠い絆』でセザール賞最優秀新人女優賞に輝き、タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(09)で国際的注目を浴びる。その他、『PARIS(パリ)』(08)、『オーケストラ!』(09)、『人生はビギナーズ』(10)、『グランド・イリュージョン』(13)、『複製された男』(13)に出演。自身の環境保護活動を記録した『TOMORROW パーマネントライフを探して』(15)でセザール賞を受賞する等、監督としても活躍中。出演作にNetflix製作映画『O2』、監督作に『Le Bal des folles(原題)』などが控えている。
ラングレー・カークウッド
(ジョン・オーウェン役)
1973年にイギリスで生まれ、アパルトヘイト時代に親の故郷である南アフリカで育つ。ジョン・ブアマン監督の『イン・マイ・カントリー』やクリント・イーストウッド監督の『インビクタス/負けざる者たち』などの国際製作を含む、様々な映画に出演。ブルース・リー原案のTVシリーズ「ウォリアー」にウォルター役でレギュラー出演しており、待機作にベネディクト・カンバーバッチ、ジョディ・フォスター共演の映画『Prisoner 760(原題)』がある。舞台俳優としても活躍し、レベルの高い演技で数多くの賞を受賞している。熱心な環境保護活動家、またトライアスロンにも出場するスポーツマンでもあり、ケープタウンとロサンゼルスを拠点に活動している。
ライアン・マック・レナン
(ミック・オーウェン役)
2003年生まれ、南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。本作のオーディションで役を射止め、映画デビュー作を果たす。世界的ファッションブランドWE FashionのCMにも出演している。演技と新しいキャラクターの開拓に加え、自然と動物を愛する彼は野生動物の写真家としても才能を発揮している。手がけたことは全て完璧をめざす勤勉な性格である。
トール
(チャーリー役/ホワイトライオン)
本作の主演ライオン。4ヶ月以降のチャーリーを演じる。ケビン・リチャードソンの親友だったが事故で亡くなってしまった同名ライオンへのオマージュとして、ソーと名付けられる。聡明で、類まれな才能を持つホワイトライオンで、百頭以上のライオンと関係を築いてきたケビンをも「トールほどのライオンには出会ったことがない」と驚嘆させる。3年を共に過ごしたミア役のダニアは、撮影終了後も定期的にトールを訪ねている。
  • 監督:ジル・ド・メストル
    1960年、フランス出身。監督、映像作家、プロデューサー、レポーターとして世界を飛び回る。独特なアプローチで数々のドキュメンタリー、フィクションを手がけ、国際エミー賞、カンヌ映画祭観客賞などを多数受賞。各国の出産事情に関する『プルミエール 私たちの出産』(07)はセザール賞にノミネートされている。2013年にケビン・リチャードソンを追ったドキュメンタリー「ライオン・ウィスパラー(ライオンの耳に囁く男)」の撮影を契機に、『ミアとホワイトライオン』の撮影を実現させる。今後もカナダを舞台に狼、ライオンとの絆を描いた『Le loup et le lion(原題)』、アニメ映画『Le Petit Nicolas(原題)』、アフリカを舞台に製作中のTVシリーズ「Big Five(原題)」など様々な作品を発表予定。
  • 脚本:ウィリアム・デイヴィス
    ロンドンでスポーツ記者としてキャリアをスタート。その後、ロサンゼルスに移住し、1988年公開のアーノルド・シュワルツェネッガー、ダニー・デヴィート主演作『ツインズ』で映画脚本家として本格的なデビューを果たす。以降、『ヒックとドラゴン』や『長ぐつをはいたネコ』などのアカデミー賞ノミネート作、アニー賞最優秀アニメーション脚本賞を獲得した『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』、そして『ジョニー・イングリッシュ』、『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』といったハリウッド映画を数多く手がけている。本作ではプルーン・ド・メストルによる原案からの脚本化を担当した。
  • ライオン・アドバイザー:
    ケビン・リチャードソン
    1974年、南アフリカ出身。世界的に有名な野生生物保護活動家、映画監督。ライオンとコミュニケーションを図ることのできる「ライオン・ウィスパラー(ライオンの耳に囁く男)」として知られ、数多くのライオンたちと信頼関係を構築している。南アフリカに自身の野生動物保護区、ケビン・リチャードソン・ワイルドライフ・サンクチュアリーを創設し、運営する。アフリカを象徴する動物であるライオンの置かれた現状を、世界に知らせ、改善するため、メディアでの発信、動物保護活動家、研究者、科学者等との協力など、様々な活動を続けている。

PRODUCTION NOTE

インタビュー
ジル・ド・メストル(監督)
■この企画はどのように生まれたのでしょうか。

かなり昔に遡ります。フランスのTVドキュメンタリーで、野生動物と深い絆を持つ世界中の子供たちのシリーズを監督したのですが、ある時、南アフリカでライオンファームを経営している家の子供を撮影しました。両親はライオンを保護するために飼育していると表向きは言っていました。動物園やサファリパークに売って百獣の王の美しさを讃えてもらう、さらには自然にリリースするのが目的だと。取材した10歳の子供はライオンたちを心から愛していました。

撮影を終え、ファームを後にしてから、彼らがライオンをハンティング用に売っていることを知りました。趣味として行われる野生動物の狩猟「トロフィー・ハンティング」の一種で、フェンスの囲いに閉じ込められた動物をハンターが撃つ、「缶詰狩り(キャンド・ハンティング)」というものです。ライオンを殺すために世界中から人々がやってきていました。サイや象、キリンも…ひどいことですが、南アフリカでは合法なのです。彼らが私にだけではなく、幼い息子にも嘘をついていたことがショックでした。息子が両親の嘘を知った時、何が起こるだろう? 彼はどうするだろう? この映画のストーリーはそこから生まれました。

本作はライオンファームを営む家の11歳の少女ミアが、ホワイトライオンの子どもであるチャーリーと絆を深めていく姿を描いています。両親はこの友情を見守りますが、チャーリーが成長し大人になると危険だと心配し始め、彼を売ることを考えます。それを知ったミアは、チャーリーを救うためファームから逃がし、ライオンが自由に暮らせる保護区へ連れて行こうとします。しかし、道中には様々な困難が待ち受けていて…

実生活でもダニアとライオンは本物の友情で結ばれていて、それが作品の土台となってくれていますが、本作はドキュメンタリーではなく完全なフィクションです。

僕は、映画の主人公となる女優を探すため、南アフリカで300人以上の子供たちに会い、その中でダニアという少女を見つけました。初めてライオンの赤ちゃんと会った時、普通はどの子もみんな手で触ろうとするものですが、彼女はおでこを近づけたんです。その場にいたライオン・アドバイザーのケビン・リチャードソンは、彼女だと確信して興奮していました。当時11歳だったダニアは14歳になり、ライオンも赤ちゃんではなく250キロの巨体ですが、今でも彼らは友達です。肉食の野生動物と少女の愛情を描く作品を特殊効果なしで制作したのは、これが初めてではないでしょうか。

■ケビン・リチャードソンとの出会いについて教えてください。
『ミアとホワイトライオン』のアイデアを思いついたものの、問題は実際にどうやって実現するかでした。私はケビン・リチャードソンのドキュメンタリー「ライオン・ウィスパラー(ライオンの耳に囁く男)」を作ったのですが、とにかく並外れた人物です。20年以上にわたって100匹を超えるライオンと関わってきた世界的なスターで、人間と動物の垣根を壊して本物の関係性を生み出してきたのです。この話をケビンにしたら、「それは難しいね、まだライオンが赤ん坊の頃から最低3年はかけて撮らないといけない。そのライオンと女優が本物の関係を築いて、それを撮影しないと! しかし、映画でそんなに時間はかけられないだろうし、無理だろう」と言われました。でも、私は「それでもやろう」と答えました。スタジオカナルとガラテ・フィルムが、ぜひと企画に乗ってきてくれて、ご覧の通り実現したわけです!
■監督にとって、子供と動物の演技指導ほど大変なものはないと言われています。それを2つ同時に行われたわけですが…
マイナスxマイナスはプラスになりますからね!
冗談はさておき、その言い方はあまり正しくないですね。子供に関して言えば、この現場で会った子供たちは素晴らしかったです。礼儀正しく、優しく、賢く、努力家で、勇敢で…私はラッキーでしたね、気難しいベテラン俳優に演技指導するような、よくある苦労はせずにすんだので(笑)
動物に関しては、ライオンを調教すべき動物ではなく、役者として捉えるという、映画業界の常識とは全く反対の方法を用いました。映画に出演しているホワイトライオンが生まれた時から、密接な関係を築いていったのです。もちろんスタッフは少し距離を保ち、撮影終盤には自分たちが檻の中に入る必要があったのですが、ライオンはカメラやマイクに慣れていきました。そして子役たちは毎日のようにライオンたちと生活を共にしていました。
つまり調教するよりも、友情と愛情を育んで仲良くなったのです。ライオンは俳優たちを信頼していて、撮影現場でとてもリラックスしていました。
■その方法で撮影するのは初めてだったのでしょうか?
はい。「刷り込み、習性、習慣」と呼ばれているものです。撮影のない時も、ソーは毎日ダニアに会い、セットを歩き回っていました。
そして演技をしたんです。ケビン・リチャードソンも、ソーほど秀でたライオンは見たことがありませんでした。撮影に時間をかけたのと現場の雰囲気のおかげかもしれませんが、何度かリテイクをした時は、本物の俳優のように全く同じ動きを再現してくれました。
■つまり、ライオンは演技できるということですか?
理解してくれたとでも言いましょうか。彼の気が乗らない時は、撮影をせずにそっとしておいた日もあって、諦めて翌日やり直しました。3~4日かけて撮影しなければならない難しいシーンもありましたが、15分くらいで終わるシーンもありました。
■その方法での撮影はギャンブルみたいなものですね!
賭けではありましたが、きちんと計算されていました。あらゆる事態に備えて計画を立て、万全の準備をしていたからです。子供も2人キャスティングして、どちらかが怖がってしまった場合に備えていました。ダニアの兄・ミック役を演じたライアンは実はダニアの代役でもあり、ダニアと同じプロセスでライオンと関係を築いていました。なので、万が一ダニアが3年目になってライオンが怖くなってしまったら、脚本を変更してライアンが主役を引き継ぎ、最後にライオンを助けるという流れになっていましたね。
ライオンも2頭、いや実際は3頭いました。メインのライオン、トールは4ヶ月以降のチャーリーを演じていました。また代役で、2ヶ月の時のチャーリーを演じた実名もチャーリーというライオン、そして雌のネージュが赤ちゃんのチャーリーを演じています。
■ライオンたちはカメラの前で成長していきますが、いつ頃から危険になってきたのでしょうか?

1歳半までは普通に撮影しましたが、それからは私たちが檻の中に入りました。個人的には檻の中はいい感じでしたね(笑)。本当に難しくなってきたのは2歳か2歳半くらいからです。人間と同じでライオンもある程度成長してくると、思春期のティーンエージャーみたいなところが少し出てくるんです。

ダニアとライアンは全く違った方法でトールとの関係を築いていて、見ていてとても面白かったです。ダニアはケビンの真似をしてライオンと地面を転げ回ったりして、とてもフィジカルなアプローチをしていました。彼女は今でもその時の傷跡が残っていますよ! ライアンはもっと慎重で距離を取るかのような接し方でした。とても穏やかで控え目な少年なので、ケビンも私たちもライアンが怖がっているのかと思うほどでした。しかし、実際は自分のやり方で地道にライオンにアプローチしていて、傷一つ負わなかったのです。ずっとケビンのライオン管理を手伝っていたスタッフもみんな、終盤には怖くなって手を出せなくなってしまったので、ケビンは自分がダニアの撮影にかかりきりの時は、ライオンのコントロールをライアンに頼んでいました。ライオンに近づけるのは3人だけで、そのうち2人は子供だったというわけです。

■「ライオンのコントロール」とはどういうことでしょうか?
実際のダニアはライオンの扱いに慣れているのですが、演技中は話が別なんです。劇中の役を演じるので、ライオンにもいつもと違う態度を見せないといけない。なので、その間はダニアではなく他の誰かがライオンをコントロールする必要がありました。ダニアは普段はライオンと遊んだり、ライオンをなだめたりしているのに、演技に入ると突然つらいふりをしたり、ライオンの目の前で叫んだり、泣いたりしなければならない。とても怖いことですが、ダニアはやってのけたのです。彼女が本当に凄いのは、ライオンを信じて、コントロールをやめて、巨大なライオンと一緒に演技をしたことなんです。
■監督もケビンに撮影を託さざるをえなかったということですね…
そうですね。撮影の第1期、第2期は自分でライオンに近づいてカメラを回しました。そこから生まれるエモーションは人工的には作れないからです。もちろんそのまま続けたかったのですが、自分ではもう撮れなくなり、ケビンにカメラを託しました。とはいっても、常に彼のイヤホンに指示を出していて、「ケビン・ウィスパラー(ケビンの耳に囁く男)」になっていたのです(笑)
■それほど並外れた撮影だと、強い絆が生まれたのではないでしょうか?
3年間、4期にわたる撮影でした。「また1年後に!」と言いながら別れるのは、妙な感じでしたね。私たちは南アフリカで一緒に過ごして、ライオンと子供たちが成長するのを見守って、子供たちの両親とも友人になり、象やキリンとブッシュの中にいたのです… 撮影の再開を皆が待ち望んでいました。
ただ撮影は未開の道でもありました。しかも、ライオンという生物はファイティングマシーンですからね。例えばある日、もう成獣だったソーが檻の中に入ろうとして、私たちには止める術がありませんでした。その時、彼はただ檻の中に何かあるか見たかっただけだったんですが、ライオン一匹のパワーは引越業者10人分ですからね!
■ライオンと人間は本当に友情を育むことができるのでしょうか? それとも劇中で父親が言う通り、ライオンは結局は人間を獲物としてみる野生動物なのでしょうか?
この作品は事実からインスピレーションを得ています。ケビンが20年間やってきたことを1時間半にまとめたものです。百頭近くのライオンと関係を築いてきて、そこには死ぬまで変わらない愛情と友情があり、一度も事故に遭ったことはありません。
もちろん、あなたが知らないライオンのテリトリーに入れば、彼は即座にあなたを殺すでしょう。しかし、友人を殺す理由は全くありません。ただ、突然、友人が獲物の様に振るまってしまうと話は別で、ライオンの前では毅然とした態度を保たないといけません。ケビンはライオンがじゃれて自分に飛びかかり、引っ掻いたり、噛み付いたりしても、そのままにさせておきます。そして、あとで病院に行って3針縫って、抗生物質を1週間飲みます。これが彼の選んだ生き方なのです。
■ドキュメンタリー出身の監督ですが、今はフィクションの方がメインになってきているのでしょうか?
ドキュメンタリーの時は、小型カメラを持って一人で旅立って、人々と交流します。それはまた全然違う体験で、そこからフィクションのアイデアやストーリーが浮かびます。現実が私の創作の糧なんです。『ミアとホワイトライオン』のようにフィクションの中に現実の体験を入れ込んでいくのが好きですね。ダニアとライオンの間に起こったことは現実で、それによりブルーバックでは得られない感動とスリルを映画の中で感じてもらえます。人々は本物を望んでいるのです。
インタビュー
ケビン・リチャードソン(ライオン・アドバイザー)
■どのような経緯でこの作品に参加されたのでしょうか?

2012年にジル・ド・メストル監督に出会いました。私は動物保護施設の引越しの最中で、働いているところを撮影したいと言われたのですが、不可能だったので、ジルは他に何かアイデアはないかと訊いてきました。私は囲いの中の動物を撃つ、「缶詰狩り(キャンド・ハンティング)」というビジネスを知っているかと尋ねました。ジルは、表向きは全てがきちんとしているライオンファームを訪ねてきたばかりでしたが、私はそこを知っていて、あそこのライオンたちはハンティングの獲物に使われるんだと説明すると、彼は憤慨していました。このテーマでドキュメンタリーを作ることも検討しましたが、それでは視聴者が広がらないと気付きました。ただメッセージを伝えるためだけではなく、全ての人に語りかけるような家族ドラマで、エンターテイメントとして皆が観たくなるフィクションの方がより効果的ではないかと考えたのです。それでどんな構成にするか考え始め、裏切りをストーリーに織り込もうと決めました。ジルが出会った家族のように、1匹のライオンをめぐり自分の子供を裏切る父親の話です。

しかし、子供とライオンの友情を撮影する方法がありませんでした。ライオンが赤ちゃんの頃から撮影をして、子供を「家族」と認めさせる以外には…。

突然、この破天荒なアイデアが現実になりました。ある日、ジルがパリから電話をかけてきて、こう言ったんです。「やったぞ、映画を作れる!」それからは目まぐるしい展開でした。

この手のフィクションは、ドキュメンタリーを作るよりもかなり複雑です。特に私たちのように、子供とライオンの関係を本物で撮ると決めた場合は。友情がリアルでなければ、観客は感情移入しないし、裏切りにショックを受けることもありません。観客の皆さんの怒りを喚起して、アクションを起こしてもらえなければならないのです。。なので、ライオンがすごく小さい頃から少女と関係を構築するのが絶対条件でした。自分の息子をキャスティングすることも考えてみましたが、まだ小さすぎました。そういうわけで、私たちに自分の子供を3年間預けてライオンと一緒に育てさせてくれる、かなりクレイジーな親御さんを見つけなければいけませんでした。子役探しはそれほど心配しませんでしたが、本当のチャレンジは親探しでしたね。

■ダニアとライアンはどのようなトレーニングを受けたのでしょうか?
トレーニングは本当に大変でした。3年間、週3回、1回2~3時間の刷り込み(インプリンティング)のセッションをしました。最初はベースを作る必要があるので、私自身で徹底的に指導しました。第2期は、週1〜2回は他のスタッフにセッションを任せられました。ライオンがある程度の年齢に達すると、また私が全て担当する必要がありました。いくつか越えないといけないステップがあって、ライオンについて、またライオンに対しての接し方など、子供たちに教えるべきことがあったからです。それは私にとってもチャレンジでした。私はライオンの前でどう振る舞うべきか知っていますが、相手は子供ですから、大人のような経験がないことを考慮しながら教えなければなりません。手を出すべきか、自分でなんとかさせるか、その時々で判断できないといけません。そのバランスがとても難しいのです。時とともに、子供たちの仕事ぶりは「ミニ・ケビン」のようになりましたが、それぞれ性格は違い、一人は少女で一人は少年でした。ライオンたちは馬鹿ではないので、それが分かります。ライオンはあなたの意図も分かっていて、ごまかせません。あなたが私を丸め込むことはできても、ライオンには通じません。だから私はもう白髪があるんですよ(笑)
■ジル・ド・メストル監督との仕事はどうでしたか?
ジルとは、彼が私についてのドキュメンタリー「ライオン・ウィスパラー(ライオンの耳に囁く男)」を制作した時にすぐに意気投合しました。私たちは同じものの見方をしています。彼の指揮でなければ、この作品は実現しなかった思います。ジルは適応力が素晴らしく、人の意見にきちんと耳を傾けます。
■動物たちとの仕事はどの様に行われましたか?
ジルには最初から、ライオンたちが快適でないといけないと伝えていました。製作スケジュールはそれが絶対条件で組まれていました。動物たちは人間のキャスト同様、いやそれ以上の扱いでしたね!私も気を配っていましたが、スタジオカナルやガラテ・フィルム、アウトサイド・フィルムズといった製作側からのサポートを本当に感じました。他の撮影にも参加しましたが、こうはいきませんでした。動物は仕事をこなさねばならず、出来ないと現場はピリピリします。私たちは3日もかけたシーンもありました。大体は1日あれば十分でしたが、うまく行かない場合は2日、さらに3日…と再撮影しました。
私はジルに、本物を撮るなら長期プロジェクトになると言いました。もしたった3ヶ月で作品を作るなら、ブルーバックや特殊効果を多用しなければならないし、少女とライオンの間の親密さはなくなってしまいます。『ミアとホワイトライオン』のスクリーンで目にする関係は本物です。ライオンと少女がいて、彼らは本当に仲が良かったのです。
■年の違うライオンを何頭か起用しようとは思いませんでしたか?
企画の初期段階で検討しました。ダニアに子ライオンとの接し方を教えて、6ヶ月のライオン、1歳のライオン、3歳のライオンと移って行くという。しかし、3歳のライオンは全然知らないライオンということになるので、私は反対しました。少女とライオンの絆をテーマに映画を作るのであれば、実際の少女とライオンの間にも絆がなくてはいけません。
また、子ライオンたちを使って、その後、どこかにやってしまうことにも賛成できませんでした。制作のために買われたライオンはその命を全うするまで、私たちが責任を持つことになっていました。自分たちのライオンとして面倒を見なければいけません。劇中で告発するような良心のないブリーダーから買い取ったからです。
■南アメリカではライオン・ハンティングは違法ではないのですか?
ライオン・ハンティングは合法です、特にキャンド・ハンティング(缶詰狩り)産業に使うため、檻の中で育てられたライオンに関しては。関係者は狩猟のためにライオンが檻の中で育てられたことを示すため、「囲い地での狩猟」と説明することを好みます。しかし、実際はライオンたちがハンターから逃がれるチャンスは1ミリもありません。これはフェアなハンティングではないのです。それでキャンド・ハンティング、缶の中の狩猟と呼ばれています。しかも、狭いと言ってもポケットハンカチーフの上みたいなものでもなく、ポケットの中で行われているようなものです。100%お膳立てされていて、決まった金額を支払えば、必ずライオンを持って帰れるのです。
■3年間の撮影中、恐怖心や疑念は全くありませんでしたか?
私はアドベンチャー精神が強くて、既存のルールをちょっと覆すのが好きなんです、この企画を見ればわかると思いますが、少しやり過ぎじゃないかとかなりの人が思ったようで、ジルや子供たちの家族に「どうして子供たちをそんな目にあわせるんだ」と言っていました。彼らは私たちのやっていることを理解できなかったのですが、アフリカに来て、現場をみて、撮影に関わらない限り、本当に理解することは不可能だったと思います。たくさんの感動と、色んな個性や人々の繋がりがあって、私たちは大きな家族みたいだったんです。ただ、もう一度やれと言われたら、今はもう全てを知っているので、やらないと思いますね!
■セキュリティー問題は悪夢のようだったのでは…
映画撮影で20年近くライオンを扱っていますが、カオスになった現場もありました。野生動物がセットや近辺に来た時から、自らセキュリティー・ブリーフィングを日々行い、どこに行けばいいのか、何をしていいか、問題が起こったらどうするべきかを伝えています。事故防止のためです。1週間トラブルがなかったからといって、気を緩めてリビングの犬の脇を通るみたいにライオンの近くを歩かないように、皆に自覚してもらうためです。彼らが野生の動物であること、それを尊重することを、常に頭の片隅に入れておかなければいけないのです。
■撮影中に一番驚いたことは何でしたか?
たくさんありますが、まずライオンのソーです。北欧の神のソーの生まれ変わりじゃないかと、ジルとよく冗談を言っています。本当にその名にふさわしいです。
同じくらい、もしかするとそれ以上に驚かせてくれたのは、子供たち、ダニアとライアンです。どんなことがあっても、この子たちは動じませんでした。私の言葉に耳を傾けて理解し、言葉通りに実行したのです。彼らは頑張り続けました。パンチされて、噛まれて、引っかかれても、彼らはまた立ち上がって、「続ける」と言いました。見事ですよ。道のりが険しくなってサジを投げた人を大勢見てきました。だけど、彼らは「ケビン、続けたい」と言ったんです。
親御さんも頑張ってくれました。二人の両親に「あなたに私たちの子供を託します」と言われて、とても謙虚な気持ちになりました。子供を誰かに託すなんて、自分にはできるか分かりません。

THEATER

上映劇場一覧
2021年2月26日公開決定
ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町
全国順次公開
Kino cinema立川、Kino cinema横浜、Kino cinema天神、
シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、伏見ミリオン
都道府県 劇場名 スケジュール
東京 ヒューマントラストシネマ渋谷 詳細 2021年2月26日〜
ヒューマントラストシネマ有楽町 詳細 2021年2月26日〜